無料でキャラクター作成、桜の花びらと梅の花びら8章

文・コールマン 絵・うめしげ(無料でキャラクター作成、作例物語)

8.

ついに始まる本番、15分前を切っていた。

前の人の演奏が終わって、純也と露木と粋也は定位置に付く。大塚先生は端っこのほうで見守る。

そして、迎える演奏。最初の出だしは粋也の尺八からだ。そこから琴が入って、最後に三味線が入る。あれだけ頑張って練習をしたんだ、「きっと大丈夫」その言葉を胸に閉まって、演奏をする3人。

出だしも琴も順調、そして露木の三味線もちゃんと他の楽器を聞いていて上手くリズムに乗れている。演奏している時、3人はこんな感覚に襲われる。海だ、海の上でイルカになった気分だ。優雅に3匹のイルカが海のど真ん中を泳いでいる、そして海の波の感覚、気持ちよく奏でる海と鳥の声に音。そんな感覚だ。

これまでにない新しい気持ちだった。これが心を奏でるということなのだろうか。

観客も大塚先生も眼を瞑り、まるで瞑想をしているかのような気分だ。でも身体は揺れてある。まるでくらげのようだ。

広い、広大な海の上で演奏をしている気分だった。そして、あっという間に最後のパート、締めくくりは露木の三味線の静かな音だ。この時だけ世界が変わる、海の中に桜の木、その桜の花びらがゆらりゆらりとゆっくりと舞う。その花びらに純也たちも観客も包み込む。聞いてなかった人も足を留めた。この桜の音で心を射止めてしまったのだ。

曲が終わると、観客たちは驚きを隠せず、拍手するどころか動けない。1人、大塚先生は遅れて拍手をした。それに連れて、他のみんなも盛大な拍手を3人に贈る。

この時、3人はどんな気持ちで、どんな景色なのだろうか。それは本人たちにしかわからない。

最後に3人はお辞儀をして、舞台を降りた。3人は仲良く手を繋いでいた。

舞台を降りた3人に、大塚先生は目の前でもう一度大きな拍手を贈った。

大塚先生:素晴らしかった…… 素晴らしかったぞ! 3人とも!

純也:あ、ありがとうございます。

粋也:うおををを!! 終わった!

茜:やり切ったわね!

すると、大塚先生はなぜか涙目へと変わる。

粋也:なぜ先生が泣いてるんですか?

と、粋也も涙目になる。

大塚先生:嬉しいからに決まってるだろ!

純也:一安心だな。

大塚先生:相変わらず、冷静だな君は。ゴホンッ! 民族楽器研究会メンバーたちよ! まだ終わりではないぞ! これから文化祭もある、1年生はあと2年、露木はあと1年残っている! なにより、今を楽しめ。

大塚先生は気合いの入った言葉をおくる、その後心配が無くなったかのような安堵の顔に変わる。

茜:あら、たまにはいい事言うわね。

粋也:よっしゃー!遊ぶぞ!

純也たちは花火までゆっくりすることにした。

大塚先生は家族と来ているので、居場所に戻ったようだ。

純也たちは一通り回る。途中で綿菓子を買ったり、焼きそばを買ったり、粋也はまた水鉄砲をやっていた。相当悔しかったのだろう。アイテム3つとることに成功した。後で聞くところどうしてもこの3つのアイテムが欲しかったそうだ。そのアイテムはキーホルダーだ。運命なのか、琴と三味線と尺八のデザインのキーホルダーだ。3人の思い出にしたかったと、粋也は言っていた。もう十分思い出になっている。粋也はそのキーホルダーを2人に渡した。どこか絆のようなものを覚えた。こんな思い出は他にない。

2人は粋也にお礼を言う。

粋也:これでみんな一緒だね!

粋也は純粋な男だ、こういう事言うし、行動もする。

粋也:さて! そろそろ花火だね! あの神社の石の辺座ろうか。

純也:そうだな。

3人はその石に座った、するとすぐに花火が始まる。花火を見ていると、途中で粋也は「焼きそばを買ってくる! 」そう言い、買いに行った。

その間、純也と茜の2人で花火を見ていると、これは何かのお告げのように綺麗なハートの形の花火が打ち上がる。その瞬間、お互い目を見つめた。

花火のよる

その瞬間、ずっと見つめたいと純也が思った時だった、茜はゆっくりと純也に近づき、

茜はキスをした。恐らく数秒だろう。

キスをした後の茜は頬を赤く染めていた。純也は心臓の音で、鼓動が早くてなにが起きたのかあまり分かっていなかった。恥ずかしい気持ちになる。

そして、茜は告白をする。

茜:私、君がすき…… 。

その言葉にさっきまでの出来事の意味を理解する。

純也は応えた。

純也:俺も好きです。

そう言い、今度は純也から茜にキスをする。茜の、純也の熱い鼓動が流れ込んでくる。花火を見ながら、長めのキスをした。お互いファーストキスなのか、下手だ。高校生らしいキスだ。

キスが終わると、茜は少し恥ずかしながらも話す。

茜:そういえばあの子遅いね。

純也:いつもの事です。どうせ、焼きそば買う途中でなにか面白そうなもの見つけてやってるんだと思います。あいつはそういう男なので。

茜:あの子はいい子ね。

純也:あいつはそういう人、いつも気を使って、優しくして、周りをみて行動してる。しかも無邪気。

茜:そうね、この八八祭の件も持ってきてくれて嬉しかった。

純也:それは同感です。おれの親友ですから、粋也が親友で良かったです。

茜:私も東堂くんがメンバーで良かった。というか、助けられてるわね。

純也:ええ、全くその通りです先輩……

と、純也が茜の事を『先輩』と呼ぶと茜は純也の口に人差し指をゆっくりくっつける。

花火の夜

茜:もう、茜でいいよ。先輩は嫌だ。

そうふくれっ面な茜を見ると純也は顔を真っ赤にする。

純也:わ、わかりました、、、 。

と、純也は焦る。

茜:はいっ! 言ってみて!

純也:………… あかね…… 。

目を逸らしながら『茜』の名前を呼ぶ。

茜:よく出来たね。

と、茜は笑顔になる。

純也はそんな笑顔に安心感を憶えた。

素敵で、繊細な笑顔だ。

これが夏祭りの出来事、最高の夜だった。

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